七十四秒の旋律と孤独 Audible 版 感想 (ネタバレあり)
話自体は結構端的というか、自我を持った機械が己の役目を全うするだけの話だが、なんといってもメアリー・ローズが猫だったというのが素直に驚いた
モミジを舐めているという描写がはじまって、一体何事かとおもったが、まさかのSF「なんだ猫か」描写であった
詩的なフレーズが多用されていて、文体が美しく、またモミジは己の目的を果たして朽ちたわけだが、本人が言っているように幸せな生涯だったのかというと正直難しい
なんというか、これを素晴らしいと表現してしまうとなんだかジハディストに共感してしまうことになるのではないかとおもうからだ 本人はそれなりに待遇に満足げではあったが、空焚きのポットと嘲られているように、とてもマトモに扱われていたとはおもえない
ただ、モミジの最期の行動が一人の人間の行動を変えることにつながり、そしてそれがアートという形で世界に遺るというのはちょっとロマンチックというかなんというか
現代に遺っている様々なアート作品も、それにいろいろな形で関わった人間たちの波紋の残滓なのかとおもうと先人たちの積み重ねに想いを馳せてしまう
「認識が再開した」っていう言い回しが好きだった、朝に目が覚めた時に「認識が再開した」って起きるとサイボーグになった気分になれる